現実は甘くなかった。

2013年6月29日。

 

この日は夏合宿の部会だった。毎年8月の終わりに3泊間夏合宿がある。

 

夏合宿では吉岡亜衣加を組む予定だった。

 

さかのぼること4週間前、某国立大学では年に2回文化祭が行われていて、そのうちの1回目が開催されていた。私はZARDを組んだのだが、なんとこの時も小暮先輩と組めた。すぐに快諾してくれたあとにギターの難しい部分を聞いて驚きつつも一度OKしたからには責任もつよと言ってくれた。

 

こんなイケメンなこと言ってくれるってありかよ!!!!

 

まだ2回目だったので声量はなかったものの、大宮先輩には1年で1番よかったと褒めてくれた。他の人からも好評だったので、この調子で頑張ろうと思っていた。

 

…ところが。

 

夏合宿部会でバンド決めが始まりいろんな先輩に音源を聞いてもらって頼んでみたのだが、誰もOKしてくれない。でも他のバンドはどんどん決まっていく。

私の軽音サークルはパートごとにいくつバンドを組めるか決まっていて、イベントごとに全体でバンドをいくつまで作れるかも制限がある。もちろん、今回の夏合宿も制限があり、バンド数が限度に到達した途端、部長にこれ以上バンドを組めないと言われた。

 

え、マジで…????

 

1年で部会に来て組めなかったのは私ともう一人の同じボーカルの女の子だけだった。

 

組めなかったものの、他のバンドも見たかったし夏合宿には行きたかったので、お金を会計でもあった小暮先輩に渡しに行った。でも。

 

「ごめん…バンド組めなかった子は合宿参加できないんだ。」

 

…あ、そうなんだ…

 

この時、私は全て悟った。

ここは初心者歓迎なんかじゃない、実力主義のサークルだと。

 

要は上手ければ組む、上手くない奴とは組みたくない、そういうことだ。

 

初心者の1年生を優先してくれるのは最初だけだった。これが現実だった。

 

そう思ったら一気に何もかもやる気を無くした。

 

部会のあと、何人かで5年生のマルボロがめちゃめちゃ似合うイケメンギタボの先輩の誕生日会で参加する予定だった。でもそんなの行きたくなくなってしまった私は主催者のはらり先輩(一つ上の音大生、キーボード、前回ZARDで組んだ先輩)にやっぱりやめますと言った。

ショックすぎたせいか明らかに様子がおかしかったみたいで、はらり先輩が心配してくれた瞬間ボロボロ泣き出してしまった。人前でめったに泣かないので珍しかったと思う。すると先輩にはこう言われた。

 

「私達も先輩達もいろいろあって今がある。決してみんな順調だったわけじゃない。今回も別にかなちゃんが上手くないから組まなかったとかそういうことじゃないよ。」

 

慰めてもらったのは嬉しかった。でも先輩達にもいろいろあったというのがすごく胸の中に引っかかった。このサークル、やばいのかもしれないとなんとなく思った。

 

先輩に話を聞いてもらった後、やっぱり悲しくて悔しくて涙が止まらなかった。その時ベンチに座っていたのが同期のほたて(あだ名)だった。彼はベースで、この前ZARDで初めて同期と組んだ人だった。愛想がいいわけではないけどいい奴ではあった。私の歌声も褒めてくれたし、何かと気が利く奴だった。

この時は無意識だったが、今思うと男慣れしていない私が唯一最初に心許した同期だったと思う。私はほたての隣に座るなり泣き出してしまった。でも彼は黙って見てくれていた。

 

家に帰ってからほたてに「泣いちゃってごめん」とLINEして返ってきた返事は、「何も言えなくてごめん」だった。別に何か言ってほしかったわけではなかったしただ黙って見てくれていたのはむしろありがたかったし、やっぱりいい奴だなと思った。

 

夏合宿に行けない分、次からはもっと頑張ろう、もっとみんながやりたいようなバンドを持ち込まなくてはと心に誓ったのであった。。